最近、ローションと潤滑ゼリーの違いや、ローションの主成分に使われているポリアクリル酸ナトリウムは危ないといった趣旨の情報をブログやユーチューブ、ECサイトのレビューなんかで見かけることがあります。
具体的には
「膣の中の水分を吸収するから膣内が乾燥して逆効果。キケン!」
「ローションは皮膚用、潤滑剤は粘膜用」
「膣の中で固まるから危ない」
「膣内に残りやすくカンジダになる」
といったかんじでしょうか。
こういった情報を見聞きした人がまたご自身のブログやレビュー、ユーチューブで発信し、情報が拡散されていますが、本当に正しい情報なんでしょうか?
ポリアクリル酸ナトリウムにまつわるネガティブ情報に「それはデマです!」と言っている番組があったので紹介します。
■目次
1)しみけんチャンネル
①ポリアクリル酸ナトリウムは膣の中の水分を吸収するは本当か!?
②ローションは皮膚用、潤滑剤は粘膜用の区別は本当か!?
③ローション使ったらカンジダになるは本当か!?
2)ウィキペディアで調べてみた
3)化粧品成分オンラインを調べてみた
4)ネット情報から得られる印象
5)結論
6)所感
1)しみけんチャンネル
AV男優しみけんのYOUTUBE番組【公式】しみけんチャンネルにペペローションのメーカー中島化学産業・特品部部長に方が出演し、ポリアクリル酸ナトリウムにまつわる情報について以下のように語っていました。
① ポリアクリル酸ナトリウムは膣の中の水分を吸収するは本当か!?
おそらく多くの方が勘違いしているのは吸水ポリマーなどに使われている架橋型ポリアクリル酸ナトリウムという成分を指してネガティブな情報を発信しているようです。
ローションや潤滑ゼリーに使われるポリアクリル酸ナトリウムはその特性上、水に溶けますので、ネバネバとした粘度が水分をプラスされてゆるゆるのローションになります。
一方で拡散されている情報の特性は架橋型ポリアクリル酸ナトリウムで、分子レベルで結合力が強いので水に溶けないで固まります(不溶性)。名前は同じなので誤解されている方が多いようですが、その特性は似て非なるもののようです。
ちなみに同番組内でポリアクリル酸ナトリウムと架橋型ポリアクリル酸ナトリウムに同量の水を混ぜて同じ時間かき混ぜるとどうなるかという分かりやすい比較実験をしています。
ご興味ある方は是非見てみると良いかもしれません。
ちなみにポリアクリル酸ナトリウムについてネットではどのように解説されているのか調べてみました。
2)ウィキペディアで調べてみた
ポリアクリル酸ナトリウム(英語: Sodium polyacrylate)とは、高吸水性高分子(SAP)の一種。主要な単位構造は [-CH2-CH(CO2Na)-]n。自重の数百倍から約千倍までの水を吸収、保持できる。
ウィキペディア
概要
高い吸水性は、親水性のカルボキシ基を有し、かつ網目構造の中に多数の水分子を取り込んでゲル構造を作ることによる。水の中にナトリウムやカリウムなどの陽イオンが存在すると吸収力が著しく低下するため、尿や血液などの体液の吸収に使用した場合の吸収力は、水に対するものより低い。
ウィキペディア
用途
水分吸収率の高さを利用して紙おむつ、保冷剤、生理用品、ローション、園芸、緑化材料などに使用されている。他に、蓄冷剤、ドリップ吸収材、結露防止剤、芳香剤、携帯簡易トイレ、洗剤原料、顔料分散剤、繊維処理剤、水処理剤、製油助剤、パッキンなどの用途がある。食品分野でも増粘剤として食品添加物グレードのものが使用される。
用途により、吸水量(吸水倍率)のみならず、吸水速度、保水性(加圧しても水を再放出しない特性)、徐放性、増粘性、凝集力、耐塩基性、耐候性などの異なる特性が求められる。分子量や構造によって特性が変わる。高吸水性のタイプは水溶液重合法、急速吸水タイプは懸濁重合法というように、目的の適性が得やすい重合方法が選ばれる。用途に合わせて、粉末、顆粒状、球状に成形したものなどが作られて流通している。
ウィキペディア
3)化粧品成分オンラインを調べてみた
化粧品配合成分「ポリアクリル酸Na」の総合レポート
物性
ポリアクリル酸Naは、吸湿性が極めて強く、水を加えると徐々に膨潤し、透明なゲルを経て均一な粘稠溶液となります。
1.3. 歴史
国内において1980年頃までは布おむつの使用がほとんどでしたが、1983年に日本触媒によって上市された高吸水性かつ安価なポリマーであるポリアクリル酸ナトリウムが紙おむつの原料として用いられるようになったことで、国内市場において紙おむつの普及が進み、同時に紙おむつの普及が進んでいた欧米市場でも高吸水性ポリマーの使用が増えていった経緯があり、紙おむつ普及のきっかけとなった原料として知られています。
また、現在は紙おむつの用途にとどまらず、農園芸のための保水剤、食品保冷剤、ペット用吸尿剤などをはじめ[3b]、医薬品や食品、化粧品など幅広く用いられています。
1.4. 化粧品以外の主な用途
ポリアクリル酸Naの化粧品以外の主な用途としては、
食品
増粘安定剤や品質改良剤として食品に用いられています。
医薬品
賦形、湿潤調整、粘稠、粘着・粘着増強、基剤目的の医薬品添加剤として経口剤、外用剤、歯科外用剤および口中用剤などに用いられています[5]。
化粧品に配合される場合は、親水性増粘
主にこれらの目的で、スキンケア製品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ製品、化粧下地製品、シート&マスク製品、入浴剤などに汎用されています。
2.1. 親水性増粘
親水性増粘に関しては、ポリアクリル酸Naは吸湿性が強く、またその水溶液は粘性が高く、アルカリ領域(pH9-11)で粘度が増大することから、粘度を調整し粘度あるいは製品の乳化安定性を保つ目的で様々な製品に使用されています
5. 安全性評価
5.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)
[ヒト試験] 50名の被検者の片腕に未希釈のポリアクリル酸Naを塗布した綿布を貼り付け、アルミニウムで覆い48時間保持し、パッチ除去後に試験部位の皮膚反応を評価した。2週間後に反対の腕で同様の手順を繰り返したところ、いずれの被検者においても皮膚刺激および皮膚感作は観察されなかった(Finnegan & Dienna,1953)
このように記載されており、試験データをみるかぎり皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。
5.2. 眼刺激性
[動物試験] 5匹のウサギの片眼の結膜嚢に最大2%までポリアクリル酸Naを点眼し、1時間後に浮腫、後半および分泌物の増加を評価したところ、5匹のうち3匹またはそれ以上で眼刺激を生じなかった(Finnegan & Dienna,1953)
このように記載されており、試験データをみるかぎり濃度2%以下においてほぼ眼刺激なしと報告されているため、一般に眼刺激性はほとんどないと考えられます。
化粧品成分オンライン
4)ネット情報から得られる印象
ウィキペディアや化粧品成分オンラインから得られるワードは
「吸水力」「吸水性」「吸湿」「増粘」「粘着増強」「親水性増粘」などが主な特性のワードになっています。確かにこれらのワードを見ると「膣内の水分を吸収する」というイメージはついてしまうかもしれません。
しかし本来の特性をよく理解すると下記のような結論になります。
5)結論
ポリアクリル酸ナトリウムに水分を足すと水分比率が上がり粘土は下がります。単に粘性の下がったゆるいジェル状になるので潤剤としてはより最適な粘度になります。膣内を乾燥させるということはありません。
実際に市販のポリアクリル酸ナトリウムが成分として入っている水溶性潤滑ゼリーを試してみると分かります。水で簡単に洗い流せます。
一方で全身用のローションは水溶性で洗い流しやすい潤滑ゼリーと比べると粘度が高く使用後も洗い流しにくいという特徴はあります。ただしこちらも水分を含んでいくことで粘度は緩くなりますのでちょっと手間ですがしっかりと洗い流せます。
また「ポリアクリル酸ナトリウムは吸収されると化学成分なので健康に害があり危ないといった書き込みも目にしますが、これも間違いです。
ポリアクリル酸ナトリウムの性質上、吸水する側の特性があるので、ポリアクリル酸ナトリウムの成分自体が肌へ吸収されることはありません。
これは化粧品としてスキンケア製品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ製品、化粧下地製品、シート&マスク製品、入浴剤など様々な製品で汎用されています。
また皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)、眼刺激性などの客観的な安全性試験や様々な文献からも安全性が確認されています。
6)所感
ネット上には本当にいろいろな情報が出回ています。特に広告収入を目的としているブロガーやユーチューバーは人々に「不安感」や「危険」を煽り閲覧回数や再生回数を稼ぐのを常套手段としています。彼らは化学者でないので、きちんとした知識を持っていません。あくまでもネット上で情報をかき集めたなんちゃって化学情報だったりしがちです。
産婦人科医でさえそのような情報をうのみにして発信しいている方もいらっしゃいます。医者というだけで信頼性が高いようにも感じますが医者は化学者ではないので化学物質に関しては専門外になります。
そういう意味では化粧品メーカーの研究開発者の方が化学には詳しいのでしょう。
ネットには使用できる情報あれば、似非科学情報もあふれかえっています。何が正しい情報なのか、エビデンスや情報の出所を見極めなくてはなりませんが、その見極めが一番大変なんですよね。
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